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中小企業の採用難が常態化する中で重要なのは、「人が足りない理由」だけではなく「人はどこから出ているのか」を把握することです。 厚生労働省や総務省のデータを見ると、離職者は特定の業界に集中している一方で、転職希望者は増え続けており、実際に行動している層と潜在層の乖離が拡大しています。本記事では、産業別の離職者数・転職動向データをもとに、人材が流出している業界の構造を読み解き、中小企業が取るべきスカウト戦略を整理します。
まとめ
- 内面的な充実感が幸福の鍵:仕事の「楽しさ・面白さ」は、金銭的報酬以上に生活満足度に寄与する。
- やりがい不足は離職を招く:転職理由の第2位は「やりがい・達成感の欠如」であり、精神的報酬の不足は人材流出に直結する。
- 働きがいが業績を作る:成長環境や貢献実感といった「意欲」に関わる指標こそが、将来の売上増や株価向上と強い相関を持つ。
- 条件提示から「共感」の獲得へ:スカウトは単なる条件提示の場ではなく、企業の思想や仕事の意味を伝え、当事者意識の高い人材を惹きつけるための最重要接点である。
「給与が高いから」という理由で入社した社員は、より好条件の企業が現れれば離れていきます。一方で、理念や成長環境に共感して入社した社員は、高い当事者意識を持って業績に貢献します。採用難の時代だからこそ、目に見える条件を超えた「企業の想い」を届けることが、持続可能な採用戦略の第一歩となると考えられます。
「仕事の満足度」は幸福感を大きく左右する
内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書2025」によると、仕事への満足度は個人の幸福を構成する重要な要素であることが明らかになっています。
同調査では、13の分野別満足度のうち、生活満足度に最も強く影響している要因は「生活の楽しさ・面白さ」でした。

「家計と資産」等よりも回帰係数が大きくなっていることから、金銭的報酬以上に、仕事を通じた「楽しさ」「面白さ」といった内面的充実感が、人の幸福感に影響することが示されています。
つまり企業が提供すべき価値は、「給与」という外的報酬だけではなく、仕事を通じて得られる意味・成長・充実感でもあると考えられます。
参考:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2025」
「やりがいの欠如」は離職の直接的な引き金になる
転職理由のデータから、仕事に対するやりがいの重要性が裏付けられています。
エン・ジャパンが実施した「転職を考え始めたきっかけ」に関する調査(回答数3,107名)において、転職理由は
- 1位:給与が低い(44%)
- 2位:やりがい・達成感がない(32%)
と、「やりがいの欠如」が第2位にランクインしました。
着目すべきは、3人に1人が「仕事の手応えを感じられない」ことを理由に転職を検討し始めている点です。
これは、たとえ給与条件が一定水準を満たしていても、精神的報酬(やりがい)が欠ければ、人材は流出してしまうというリスクを示しています。
参考:エン・ジャパン株式会社『「転職を考え始めたきっかけ」に関する調査レポート 2025年版』、
働きがいの高い企業ほど、業績も向上する
「働きがい」は個人の満足度だけでなく、企業業績とも強く結びついています。
横浜国立大学の西家宏典氏、長尾智晴氏による研究「従業員口コミを用いた働きがいと働きやすさの企業業績との関係」では、残業の少なさなどの「働きやすさ」よりも成長環境や貢献実感といった「働きがい」スコアの方が、翌年以降の売上高伸長率やROA(総資産利益率)と強い正の相関があることが示されました。
働きやすさ単独の改善は株価リターンに対して影響を与えず、従業員の意欲こそが企業の中長期的な業績と深く関係している可能性を示唆しています。
つまり、スカウトで給与や福利厚生(働きやすさ)だけを訴求するのは、企業の成長ポテンシャルを候補者に伝えきれていない状態だと言えます。

参考:西家 宏典、長尾 智晴「従業員口コミを用いた働きがいと働きやすさの企業業績との関係」(2021)
スカウトで伝えるべきは「給与以外の魅力」
スカウトで伝えるべきポイントは、「働きがい」を構成する要素を具体的に言語化することです。
① 企業カルチャー
- 挑戦できる環境があるか
- 1on1やフィードバック文化があるか
- 心理的安全性が担保されているか
② 成長機会
- 任される裁量の範囲
- 獲得できるスキル・経験
- 中長期のキャリアパス
③ 社会貢献性
- 事業がどんな課題を解決しているのか
- 社会や業界にどんな価値を提供しているのか
これらを具体的なエピソードや役割レベルで伝えることが重要です。
給与ではなく「共感」で人は動く
「給与が高いから」という理由で入社した社員は、
より高い条件を提示する企業が現れれば、離れていきます。
一方で、
「この企業の理念に共感できる」
「ここでなら成長できる」
と感じて入社した社員は、高い当事者意識を持って業績に貢献します。
スカウトは単なる条件提示の場ではなく、企業の思想・成長環境・仕事の意味を直接伝えられる、最も重要な接点です。
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執筆者

辻 雅史
インターン
情報系大学院在籍。教育系スタートアップにて、運営として記事制作やデータ分析、集客やマーケティングなどの業務に従事。スタートアップ従事者として、挑戦しやすい日本を実現するため株式会社BizDBにインターン参加。